朝鮮大学校の鄭先生は絶滅危惧種のクロツラヘラサギの研究の第一人者です。
市田則孝さんが副総裁を務める、世界で一番歴史があり、また広くネットワークを持つバードライフ・インターナショナルや、ＮＰＯ法人バードライフ・アジアとのご縁で、鄭先生ご夫妻とお知り合いになり、こちらの学校で開催されるシンポジウムや活動報告などにお招きされるようになりました。
先生ご夫妻の飾らないお人柄や、きちんと教育された学生さんたちにお会いすると、とても嬉しい気持ちになります。
今日は鄭先生もご出演された記録映画「国境のない鳥」が上映されます。
東京国際映画祭の「自然と人間の共生」をテーマとしたnatural TIFF＝自然ドキュメンタリー部門で１００作品以上エントリーの中からベスト８に残った映画だそうで、絶滅危惧種のクロツラヘラサギの越冬地から繁殖地への移動や、それらの情景をまとめたものです。
３００羽までに生存数が激減した彼らが繁殖をしていると思われているのが主に３８度線。鄭先生が祖国から離れた日本で人工飼育に成功され、北と南の朝鮮だけでなく台湾や中国など多くの国の関係者が国境を越えてこの鳥の保護に努め、いまは２０００羽まで戻って来ました。
でもまだ、いろんな問題が山積みです。
それらの問題も含め、バードライフ・アジア市田副総裁から上映終了後「明日への提言」として様々な鳥へ対する、アジアエリアでの保護活動の様子も紹介されました。
中でも印象に残ったのはヤンバルクイナのいる沖縄のやんばる地域の話です。
毎年10羽近くが公道で車に轢かれていたことを受け、行政は道路の脇の草が原因と思い、草を全部刈り込み、コンクリートの土手にしたそうです。結果、土手に出たヤンバルクイナは実を隠す草がないため道路に出ざるを得なくなり、倍の頭数が交通事故で命を落とすことになりました。
このあたりの公道には、ヤンバルガ公道に出て戻るとき用の小さな階段も、一基100万もの予算をかけて作っているそうです。が、はたして人間の思惑どおりその不思議な階段を、ヤンバルクイナがどれだけ使っているのか…
また同じ地区ではカニも道路でよく轢かれるとのことで、道路の下をカニが通るような通路を作っているとのことですが、カニの交通事故死も減っていないとのこと。
人間が自分の考えを押し付けるだけの「費用をかければよい」「箱モノを作ればよい」という、実の無い行動だけでは、守れないものもいっぱいある、という悪しき例としみじみ思いました。
また、企業がよく取り入れるエコイベントとしての「植樹」ですが、これも木を手入れする＝森の手入れが必要＝そのための費用も確保してのイベント、とはなかなか成らず、植えっぱなしの木が立ち枯れてしまう情けない結果になっているところも多いそうです。
確かに「植樹」はイベントとして「絵」になりやすいけれど、「絵」的に良いだけではエコとは呼べないですね。
バードライフ・インターナショナルが提唱する「人と自然との共生・共存」の道を、多くの人が気づき、目覚め、実践に結びつけてほしいと願わずにはおられません。
