「15.16.17と私の人生暗かった…」
ぎんざNOW!!の前身番組だったか、夕方の情報番組でスポットで流れた「圭子の夢は夜開く」が、それはもう衝撃で、どうしていいかわからなかったほどでした。
黒い背景、黒髪の長めのおかっぱ、黒いセーターに、ギター抱えた、地味に、淡々と歌う藤圭子さんとのテレビでの出会い…

武蔵野の面影が色濃く残る場所にある女子校に通っていて、これから15になろうかという私の周りには
「私の人生暗かった…」
なんて片鱗もない、元気で明るい笑顔ばかりがあふれていた。
もちろん年頃のいろんな小さなモヤモヤがあっても、それで人生暗くなるほどのことでもなかったし。
こんなに淡々と「暗かった」と言われても、私のちっぽけ経験値では何もご相談に乗って差し上げられないわ…と。
この人の背負っているものはとてつもなく重くて大きいのだろうなぁと、しみじみ思ったものでした。

そのあと「女は恋に生きて行く」という気持明るめの曲が出て、なんだかそれが嬉しかったのか、英語のテストの裏にいたずら書きをいろいろした中に「女は恋に生きて行く」と書いたら、担当のN先生が目ざとく見つけて、テストの返却時
「これは何?」
と聞かれるので
「藤圭子さんの新曲で、今までの世の中怨んでますの内容とはちょっと違うし明るい曲調なので、これもきっとヒットすると思います」
云々かんぬん的なことを言ったら
「じゃ、歌ってごらんなさい」
と言われて滔々と歌いきって。
12歳で森進一さんの追っかけをしていたので、演歌に対してガキんちょなりに一家言はあったんだと思う。
けっこう厳しい先生が苦笑いして許してくれたもの。

歌声も雰囲気も、ホントに好きだったなぁ。
演歌というより「怨歌」という言葉が似合う歌い手さんだったけれど、そのイメージを背負ったままだときっと成功した後も苦しかったろうなぁ。

「京都から博多まで」
なんて名曲中の名曲。

もっと歌ってほしかったなぁ。残念でならない。
ご冥福をお祈りします。